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《大規模修繕ABC》マンションの資産価値を維持するために最も重要なのが大規模修繕。最初はピカピカでも時間が経てば劣化する。新築時の状態に回復するための大規模修繕工事。いつやる? 何をする?

▼大規模修繕工事とは


マンションの設備は次の3つで構成されています。


①建築(仕上げ)

 外壁、塗装、防水など

②設備(機械)

 電気、給排水管、空調など

③躯体

 コンクリート、鉄筋、鉄骨など


このうちの①、②を修繕するのが大規模修繕工事です。


大規模修繕工事は急に思い立ってできるものではありません。工事内容、工事工法の検討から始まって、最後は住民総会での決議を経なければなりません。その過程で目にする人が多いのは、それぞれのマンションの持つ『長期修繕計画』です。長期修繕計画とは、住民(区分所有者)が毎月積み立てる修繕積立金残高と大規模修繕工事にかかる費用を比較するシンプルな内容です。しかし、その中身をよくみて愕然とする人も多いのも事実です。


 『修繕積立金が足りない』『今回は足りたが次はギリギリ・・・』。大規模修繕工事はマンションのライフサイクルの中で、想像以上に頻繁に実施されます。


築20年を過ぎたあたりからは、工事間隔はさらに詰まり、工事の規模も大型化していく。

 物理的劣化もさることながら、時代の経過とともに機械の性能もずいぶん時代遅れになってしまう傾向が多く見受けられます。建物の劣化には以下の3つがあります。


①物理的劣化

 施工から年月を過ぎた建物は、雨水や排ガス、その他の化学的要因、および長年の使用

 による物理的要因によって使用材料・機器の劣化が始まり、進行します。

 この劣化に応じて定期的な修繕が必要となり、劣化が建物全体に広がると大規模修繕が

 必要になります。

②機能的劣化

 技術の進化により、建物建築時に比べて高性能・小型化された設備機器が材料が開発さ

 れた結果、性能が低下していなくても相対的に劣化(陳腐化)することがあります。

 また、新耐震基準(※)などの法改正により、法令の基準に適合しなくなることもあり

 ます。

③社会的劣化

 社会的な要求が時代とともに変化し、高精度情報化や部屋構成等に対応できないことで

 生じる劣化のことです。インターネットやオール電化対応マンション、防犯システムが

 完備されているマンションが販売されているマンションが販売されている現在、このよ

 うなニーズに対応できないものがこの劣化にあたります。


▼購入時には意識しない修繕という隠れた支出


大規模修繕工事のプレッシャーに現在、直面しているのが築30年を超えたマンションに住んでいる人たちです。当時のマンションは現在に比べると建築材料が古く、建築工法も発展途上にあったからです。


 神奈川県内にある某マンション(250戸)は築36年目。漏水工事が相次いだため、給排水管の更新を決めましたが、3億円以上の費用が掛かりりました。また、都内にある別のマンション(45戸)でも築34年を迎え、排水管の交換を計画しましたが、『間が壁の中に埋め込まれていて、壁を壊さないと交換ができない』という話になり、致し方なく廊下側の壁を伝うようにして、新たな排水管を通すことにした事例があります。

 20階を超える最新型のタワーマンションには、また別の課題があります。それは一棟一棟、ゼネコンがその時点でもつ最新の工法を駆使して造られているため「すべてが実験的建物。修繕も個別対応が必要になる」(大規模修繕工事の専門家)。材料や設備が特注で、汎用品が使えないこともしばしば。費用が嵩む条件が揃っています。

 築後およそ12~15年目に訪れる1回目の大規模修繕工事は規模や内容にもよりますが、

一戸あたり60~100万円かかるといわれています。仮に100万円とした場合、40年で3回工事すると300万円かかる計算です。これに耐久年数が切れた順に行う設備(エレベーターや電気機器など)の更新費用が加わると、500~600万円かかる可能性もあります。また、住民同士で利用する共用施設が多い場合には工事代金の総費用がさらに増えることになります。「特に水ものはコストが高く、噴水、プール、スパ・・・。これらはポンプの交換に加え、濾過機、減菌器など、常にメンテナンスが必要」(ある建築士)。都内のあるマンションでは、30年の総修繕費が一戸830万円に達した事例があります。


▼修繕工事でどこを直すのか

いつ、どこを修繕するかーー

国土交通省は「長期修繕計画標準様式」で大まかな修繕時期を示しています。ただ、これはあくまでも目安に過ぎず、日常の補修を効果的に行ったおかげで、1回目の大規模修繕工事が築18年目や20年目で済んだ事例もあります。3回のところを2回で済ますことができれば補修費が多少増えても総費用を安く抑えられる可能性があるのです。逆に、マンションが置かれた環境によっては、修繕周期を早めなければならないケースもある。首都圏の海外に近いマンションでは、共用玄関の扉が海風にあおられてパタンパタンとうるさく、住民から苦情が殺到。まだ築10年を超したばかりだが、1回目の大規模修繕工事時に自動扉への取り換えを余儀なくされたケースもあります。


▼マンション修繕はニッポンの課題

日本に存在する分譲マンションは2021年現在、660万戸に達しています。国民の約1400万人がマンション住まいです。このうち1回目の大規模修繕工事の目安となる築12年を経過したマンションは約430万戸におよび実に3棟に2棟が”要修繕年齢゛に入っている計算です。

また、築30年、1世代を経過したマンションも100万戸を超えています。

 以前は年数が経ったマンションは建て替えればいいという幻想がありました。しかしながら、規制や費用を考えると建て替えは難しいという実情があります。よって、昨今では、きちんとした修繕を施して建物の寿命を延ばしていく必要性が高まっています。


▼修繕周期は部位により様々


建築系修繕

鉄部塗装(主な対象部位)

雨がかり部分(開放廊下、階段、ベランダ手すり、屋上フェンスなど)

                 方法:塗り替え  周期:4年

非雨がかり部分(住戸玄関ドア、配電盤類、屋内消火栓箱など)

                 方法:塗り替え  周期:6年

非鉄部塗装(アルミ、ステンレス製の手すり、隔て板など)

               方法:清掃・塗り替え 周期:12年

外壁塗装

外壁          方法:塗り替え  周期:12年

            方法:除去・塗装 周期:36年

タイル            方法:補修 周期:12年

シーリング(外壁目地、建具回りなど) 方法:打ち替え 周期:12年

防水

屋根(屋上)      方法:補修 周期:12年

            方法:修繕 周期:24年

バルコニー床      方法:補修 周期:12年

開放廊下・階段などの床 方法:修繕 周期:12年


設備系修繕

建具・金物

建具(ドア、窓サッシ、網戸、屋外鉄骨階段など)

         方法:点検・調整 周期12年

         方法:取り替え  周期36年

金物類(集合郵便受け、宅配ロッカー、避難ハッチ、室名札、パイプスペース扉、屋上フェンスなど     方法:取り替え  周期12年または36年


給排水

給水管・排水管  方法:更生    周期:15年

         方法:取り替え  周期:30年

受水槽      方法:取り替え  周期:25年

給水・排水ポンプ 方法:補修    周期:8年

         方法:取り替え  周期:16年

設備

ガス管      方法:取り替え  周期:30年

空調設備(管理室・集会室などのエアコン)      方法:取り替え 周期:15年

換気設備(集会室・機械室などの換気扇・換気口など) 方法:取り替え 周期:15年

電灯(共用廊下・エントランスホールの照明機器、配線器具、非常照明、外灯など)

                          方法:取り替え 周期:15年

避雷針      方法:取り替え  周期:40年

自家発電機    方法:取り替え  周期:30年

テレビ共聴アンテナ、増幅器など           方法:取り替え 周期:15年          

インターホン、オートロック、住宅情報盤など     方法:取り替え 周期:15年         

自動火災報知機、表示灯など     方法:取り替え 周期:20年

エレベーター(かご内装、扉、三方枠、全構成機器)  方法:補修   周期:15年

                          方法:取り替え 周期:30年 

機械式駐車場   方法:補修   周期:5年

         方法:建て替え 周期:20年

外構・付属施設

平面駐車場、側溝、遊具、ベンチ、埋設排水管など 方法:補修・取り替え 周期:24年

自転車置き場、ゴミ集積所、植樹         方法:取り替え・整備 周期:24年


▼置き去りにされたサッシ問題

適切な工事を適切な時期に行うべき大規模修繕工事。ただ、実は多くのマンションで、窓サッシの取り替えが長期修繕計画に盛り込まれていないケースが見受けられます。意外かもしれませんが、各戸の窓サッシは外界と接する開口部のため、専有部分ではなく、共用部分に

区分されています。同じ理由から玄関扉も共用部分です。つまり、各戸の判断で勝手にリフォームすることはできず、長期修繕計画の中で直していくしかありません。「窓枠が歪んで雨が降り込むようになっても、タオルや気泡衝撃材を挟んだりして我慢しているケースを何度も見ている」「窓サッシは値が張る。掃き出し窓で30万円程度、全部のサッシを替えたら1戸200~300万円かかるのではないか」(専門家)。これから計画に盛り込もうとすれば、修繕総額は一気に跳ね上がるため、管理組合にとっては頭が痛い問題となりそうです。


▼大規模修繕工事の進め方


1)仮設工事

作業員の詰め所や仮設トイレを設置。エレベーターや非工事箇所を傷つけたりしないための養生(シールなどでの保護)をした後、鉄骨や鉄柱を使って作業員の足場を組み上げます。

作業員は足場からベランダに入って作業をします。高層マンションの場合には、屋上から吊るゴンドラや、移動昇降式足場を用いることもあります。


2)鉄部塗装工事

鉄は一度さびてしまうと元には戻りません。さびが進行し腐食すると、断面積が少なくなって強度に支障がでるため、4~6年ごとの小まめな塗り替えが耐用年数を延ばします。メーターボックスや消火栓ボックスの扉、玄関扉の枠、手すり、フェンスなど箇所が多いため、工事期間は延べ1ヵ月以上に亘ることもあります。


3)シーリング工事

サッシ周りや壁の継ぎ目に打ち込み、水密性や気密性を高めるのがシーリング工事です。弾性があり、部材同士の緩衝効果もあります。温度の変化や紫外線にさらされて劣化すると建物内部に漏水する羽目に。外壁タイルの浮きや剥がれを引き起こしたり、最悪の場合、建物構造自体の劣化を加速させる恐れもあります。


4)下地補修工事→外壁塗装工事

美観の維持以上に重要な目的は、躯体を支える鉄筋の保護にあります。コンクリートはアルカリ性ですが、空気中の二酸化炭素などの影響で中性化します。これが進むと中の鉄筋が錆びやすくなるため定期的な塗り直しが欠かせません。ひび割れも同様で、進行すると鉄筋が直接酸素に触れてしまうことになります。


5)防水工事

雨漏りを防ぐため、屋上にはあらかじめアスファルトなどで防水層が張られています。ただ、屋上は日光、雨、風、雪などのさらされ、マンション内で最も過酷な条件下に置かれているため、実際に雨漏りがなくても防水層を定期的に刷新する必要があります。同様にバルコニーの床面にも防水工事は欠かせません。


6)その他の工事

工期終盤になると細かい工事が始まります。階段の勾配調整、鳩よけ器具の取り付けなど、項目はマンションによって様々です。日頃、不便を感じているところをきちんと工事内容に

盛り込んでもらえば満足のいく修繕工事になります。


7)設備工事

照明や空調、オートロック、エレベーターなど、現代のマンションは機器のかたまりでです。竣工当初は目立った修繕項目はありませんが、築15~20年を過ぎたあたりから一気に始まり、修繕に要する金額も大きくなります。中でも大物はエレベーター、機械式駐車場、給排水管の3つ。技術革新が活発な分野のため、最新鋭の設備に交換しようとすると修繕予算をオーバーしてしまうケースもあります。


8)バリューアップ工事

修繕工事は竣工時の状態に戻すのが基本。そこに住み良さや美しさを加えるのがバリューアップ工事です。その内容は災害対応、防犯、省エネ、高齢化対策(バリアフリー)などに分かれます。例えば、階段の手すりを白内障でも認識しやすいオレンジ色で、握ったときに力が入り易いデザインにする方法があります。適正な費用で最大限の付加価値を追求することが重要です。


以上が大規模修繕工事の大枠になります。

次回は、さらに踏み込んだ話をして行きたいと思います。












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